Fsの独り言・つぶやき

横浜市在住。一応理系卒。音楽・美術・文学・政治などをつぶやく。60歳定年退職。膝・腰痛で登山を65歳で断念。現在は街中ウォーキング。

中原中也の詩「骨」

 高校生の時に印象に残った中原中也の詩がある。これも「在りし日の歌」におさめられている。これは読んでそのまま意味は通じる。難しいというか、判らなかったのは第2連にある「雨を吸収する」の意味。「光沢もない」「風に吹かれる」「幾分空を反映する」というから骨の表面のことかと思っていると唐突に「雨を吸収する」と骨の内部構造に言及するあたりがわかりにくいと思っていた。
 しかしこの詩の持つ言葉のリズムはとても気持ちがいい。このリズムが私には中原中也のもつ詩の最大の特徴だと思っている。

  骨

ホラホラ、これが僕の骨だ、
生きてゐた時の苦労にみちた
あのけがらはしい肉を破つて、
しらじらと雨に洗はれ
ヌックと出た、骨の尖。

それは光沢もない、
ただいたづらにしらじらと、
雨を吸収する、
風に吹かれる、
幾分空を反映する。

生きてゐた時に、
これが食堂の雑踏の中に、
坐つてゐたこともある。
みつばのおしたしを食つたこともある、
思へはなんとも可笑しい。

ホラホラ、これが僕の骨--
見てゐるのは僕? 可笑しなことだ。
霊魂はあとに残つて、
また骨の処にやつて来て、
見てゐるのかしら?

故郷の小川のへりに、
半ばは枯れた草に立つて
見てゐるのは、--僕?
恰度立札ほどの高さに、
骨はしらじらととんがつてゐる。